この記事では、フリーランス・副業人材の活躍に求められる能力や行動として、RPOサービスWHOMが設定した5つのコンピテンシーを紹介します。
フリーランス・副業人材の方には、案件の獲得や活躍、継続を目的として紹介する5つのコンピテンシーを意識していただきたいと考えていますし、フリーランス・副業人材を活用されたい企業・担当者の方には、選考やマネジメントで目を向けていただきたいと考えています。
目次
フリーランス・副業人材は、特有の能力・行動が求められる
昨今、正社員ではなくフリーランス・副業として働く人が急増し、同時にその人材を活用する企業も増えています。
フリーランス・副業人材として就業すること、もしくはそのような人材を雇用することは、たとえば以下のような内容をはじめとして正社員の就業・雇用とは様々な面で違いがあります。
- プロジェクト開始前の選考に時間や工数を多くかけられない
- 雇用を解除することが容易である
- 育成や評価、モチベーション管理などのマネジメントにパワーをかけない
- 早期に、プロジェクトのフェーズ毎に結果を出すことが求められる
業務委託では「エンジニア採用ができるか」「スカウトがうまいか」「面接ができるか」といったハードスキルや実務経験はもちろん重要ですが、上記のような違いを理解し、所謂「フリーランス力」や、「業務委託としての営業力」といった外部の人間として関わるが故の特有の能力や行動が求められます。
このような特有の能力・行動が発揮できずに採用実務の実力はあるにも関わらず、フリーランス・副業人材になった途端に仕事が任せてもらえなくなったという方は多く見かけます。”なんとなく正社員の就業(雇用)の延長線”だと捉えいつまでも案件を獲得できなかったり、獲得できたとしても途中で早期終了されてしまったりします。
一方で、フリーランス力とは具体的に何かはまだまだ言語化されておらず、案件を任せてもらえなかったり早期終了されてしまったりする理由がわからないという声が聞かれます。また雇用する企業側も「どのような人が業務委託に向いているのかわからない」「フリーランス・副業人材を雇ったけど成果を出してくれない」といった悩みの声を多く聞きます。
RPOサービス「WHOM」ではフリーランス・副業人材を活用した採用支援サービスを提供し、これまで100案件近く創出しており、上記のようなお悩みの声を多く聞いてきました。そこで、案件で高いパフォーマンスを発揮したケースとそうでないケースとを比較し、それぞれどのような問題が起き、その際にどのように乗り越えたのかを整理しながら共通項を探り、フリーランス・副業人材に求められる行動特性や能力として5つのコンピテンシーを定めることにしました。
コンピテンシーとは一般的には「行動特性」とされ、スクノバーやクリールマンなどは「発揮(職務)能力」としていますが、ここでは「コンピテンシーとはなにか」を厳密に定義・区分けせずに、採用業務特有のハードスキル・経験・知識(採用業務経験、スカウト力、エンジニア職の採用経験など)ではないものを広く指すことにします。
フリーランス・副業人材に求められるコンピテンシーの紹介
今回定めたコンピテンシーは以下の5つです。もちろん、これ以外にも様々なコンピテンシーが重要ですが、多すぎても実務上の耐久性が低くなりますので特に重要だと考える5つを整理しています。
- ラポール形成力(開始前)
- まず動く力(初期)
- 自ら仕事を創る力(中期)
- イシュー見極め・提案力(後期)
- 自己管理力(常時)
ここで設定した内容は図1のようにプロジェクトをフェーズ別に分解した際に、それぞれで重要だと考えるコンピテンシーです。
1〜4のコンピテンシーは一見つながりのないものに見えますが、「信頼を段階的に積み上げること」を目的としたものになります。
業務委託案件では、当然依頼された業務を遂行し期待された成果を出すことが求められますが、プロジェクトが始まってすぐに依頼された範囲を飛び越えて課題提起したり、周辺業務に手をつけたりしては信頼を失います。たとえば「スカウトで成果を出してほしい」という依頼に対して「そもそも採用戦略に問題があるからそこから関わらせてほしい」といった提起をはじめにしてしまえば「求めていることはそこではない」となります。
一方で、プロジェクト途中で成果が芳しくなかったり効率化できるにも関わらず同じ作業を繰り返していたり、本質的な課題に言及できなければやはり信頼を失いプロジェクトが頓挫します。たとえば「スカウトを500通送ったが効果がなかった。今度は1000通送り続ける」といった行動をとってしまえば信頼を失い、「そもそもスカウトという手法が正しいのかを採用戦略から関わり見直したい」といった提起であれば受け入れられる可能性が高いでしょう。
このように同じ能力・行動でもタイミングによってその評価は分かれることがありますので、信頼を段階的に積み上げ、受け皿を大きくしていくことが大切になります。成果・信頼をまずは出したうえで、より大きな業務・裁量・自由度等を求めることは業務委託だけでなく正社員であっても当然のことですが、業務委託ではこのサイクルを短期間で行わなければなりません。案件を獲得できなかったり、契約が解除されたりする理由には、このような現状得ている信頼の大きさと提供する業務とのバランスが取れていないケースが非常に多く見られます。
ここから、それぞれのフェーズで発揮すべきコンピテンシーを紹介します。
1. ラポール形成力
ラポール形成力は特にプロジェクト開始前に求められる能力・行動です。プロジェクトの開始前は、何よりもまず「仲間として迎え入れて問題がないか」「社内情報を伝えても危なくないか」といった最低限の信頼関係の構築が重要になります。これを本取り組みではラポール形成と呼びます。ラポールを形成できなければそもそも案件を受けることができません。
ラポールは様々な要素から成り立ちますが、そもそも打ち合わせの時間に遅れない、リモート環境の場合は適切なカメラワークを設定できている、服装に清潔感があるかといった印象に関する事柄から、質疑応答をエラーなく行えるか、相手の話に傾聴の姿勢を示しているか、言葉遣いはフランク過ぎないかといったコミュニケーションに関する事柄、過去の案件の機密情報をフランクに話しすぎていないかといった情報の取り扱いに至るまで広く要素が絡み成り立つものだと考えています。
WHOMでは面談を通じてこのラポール形成について確認し、実際に案件に参画した際にクライアントと信頼関係を築ける人材であるかを判断していますが、質疑応答よりもあえて印象を重要視しています。
2. まず動く力
「まず動く」とは不完全な状況であっても依頼された業務・責任範囲で早期に動ける能力・行動特性です。言い換えれば、プロジェクト開始時にスタートダッシュを切って初期のクライアントの期待値を超えれるかです。
業務委託のプロジェクト初期では、多くの情報をキャッチアップしながらも早期に立ち上がり、見えやすい成果を出すことが求められますが、フリーランス・副業人材は丁寧にオンボーディングをしてもらえたり、社内情報を漏れなく・深く提供されたりといった対応はされないことも多いです。また依頼される業務・責任範囲が「スカウトを100通送付する」ことだとして、「そもそも採用計画が曖昧」「有力な候補者が枯渇している」「スカウトよりもリファラルを促進した方がいいといった」前提や周辺業務から介入すべきだと感じる状況も多くあります。
このような場合に、万全の状態にしようと準備に時間をかけてしまったり、依頼された範囲の前提や周辺業務に時間を割いてしまったりするケースが見られますが、「まず動く」が発揮されず手を止めてしまえばクライアントの満足度は低くなりがちです。そのため万全の状態でなくともまずは依頼業務を遂行する。前提や周辺業務に問題を感じてもまずは自分の業務範囲にコミットし早期に成果を出すことが大切です。
質問例:
あなたはプロジェクト開始時に「1ヶ月でスカウトを100通送ってほしい」と依頼をされました。しかし業務を始めてみるとPCセットアップが遅れたり情報共有が十分でないなど受け入れが万全ではない状態でした。また、求人票の内容やエージェント対応など依頼されたこと以外にも問題を見つけました。このような場合、最初に最初の1ヶ月をどのように過ごしますか?過去のエピソードも含め教えて下さい。
※コンピテンシーの有無・多寡の判断は直接的な質問よりもエピソード等を中心に確認することも重要とされますが、実務上の観点から直接的な質問にしています(以降同様)。
3. 自ら仕事を創る力
自ら仕事を創る力とは、与えられた仕事をこなすだけでなく、自ら新しい機会を見つけ出し、積極的に仕事を創出する能力・行動です。業務指示が明確になされない場合や与えられた業務指示ではうまくいかない場合に、自ら仕事を生み出し実施できることを指します。
プロジェクトの中期では、依頼された業務、指示された作業等が一定完了し「このまま同じ方法や作業を続けるべきか」「次に何をすべきかわからない」という状況がたびたび起こります。この際に、うまくいっていない方法を「作業」として繰り返し行ってはより大きな成果は見込めませんし、指示がないから何もしなくてもいいやラッキーとなってしまえばすぐに信用を失いプロジェクトは終了してしまいます。そのため依頼された業務範囲・方法を超え期待以上の価値を提供することが大切です。
但しここで提案すべき問題点や業務範囲は、プロジェクト内の期間や裁量で完結する事柄であることが重要です。プロジェクトの中期ではまずはプロジェクトを完遂させることが重要です。また、プロジェクト内の期間や裁量の範囲を大きく飛び越えてしまってもまだ信頼が足りないことが多く「アイデアは嬉しいがあなたにはまだ任せられない」となってしまいます。
質問例:
あなたはプロジェクトの中盤で依頼されていたことが一定終わってしまった状況です。しかしクライアントから追加の業務指示はありません。このような場合、どのように考え行動しますか?過去のエピソードも含め教えて下さい。
4. イシューの見極め・提案力
イシューの見極め・提案力は、プロジェクト内で完結しない本質的な問題を見極め、積極的に提案し、長期的にクライアント全体を解決の方向に導いていく力です。プロジェクト内で完結しない本質的な問題を見極め、積極的に提案する能力・行動です。
プロジェクトの後期では、次に実施すべきプロジェクトを提案することが求められます。フリーランスや副業人材は、次の登用やさらなる挑戦の機会を受動的に待っているだけでは仕事はもらえません。また外部の人間という立場だからこそクライアント内部では気づいていなかったり、或いは気づいているけど放置してしまいがちな問題を指摘することができるはずです。
そのためこのコンピテンシーを発揮し、次のプロジェクトをクライアントと一緒に企画・設計する必要があります。
このコンピテンシーが無ければクライアントにとって代替可能な存在になってしまいますし、より安い金額の他の人・サービスに乗り換えられてしまいます。
質問例:
あなたはひとつのプロジェクトが終了する際に、次のプロジェクトについて提案をしたことはありますか?またその際にクライアントが気づいていない本質的な課題や問題点を指摘したことはありますか?過去のエピソードも含め教えて下さい。
5. 自己管理力
自己管理力は自分自身の時間、感情、健康を効果的に管理できる能力です。業務委託では、育成を前提としていないために中長期にわたって同じ業務・作業を依頼されることも多くモチベーションが保ちにくい傾向があります。また、評価のために工数を割いてもらえることも少なく、実施したことや出した成果に対して気づかれない、称賛されないといったことも珍しくありません。加えてタスクや工数マネジメント等も曖昧なものですのでキャパシティ以上の業務を依頼され、自分で優先度や期待値のすり合わせ等をしながら業務にあたることも多くキャパオーバーにもなりがちです。このような状況では意識的・戦略的に自分自身の時間、感情、健康を効果的に管理することが求められます。
成り行きに任せるだけで「クライアントが評価してくれない」「同じ作業ばかりでやる気がなくなった」「業務の優先度を指示してくれない」など不平不満は多く聞かれますが、業務委託として関わる以上は自己管理もひとつの能力であることを意識しなければなりません。
自己管理ができないと、仕事の質が不安定になり、ストレスが溜まりやすく、仕事だけでなく個人生活にも悪影響を及ぼすことになります。時間をうまく管理できず、納期を守れなかったり、クオリティが一定しなかったりするとプロフェッショナルとしての信頼を失います。
質問例:
あなたが仕事のパフォーマンスを継続的に高い状態にするために意識していることを3つ挙げてください。またこれまでストレスや業務負荷の高い状況に置かれた時のエピソード(実際のできごと、その際の心情、乗り越え方など)について教えてください。
あえて採用しなかったコンピテンシー
今回、ソフトスキル・コンピテンシーの議論をする中であえて採用しなかったものもあります。これらは一般化された言葉や解釈性の高い言葉であるために、社内でもその有無・良し悪しの評価が人によってばらつきが大きかったのです。もちろん、どのようなソフトスキル・コンピテンシーを採用するのかに正解はありませんし、またその内容をどのような言葉で表現するかにも正解はありません。
その上で、あまりにも一般化されたものや解釈性の高いものは実務に耐えないためにあえて採用しないことも重要だと考えています。
- オーナーシップ
オーナーシップは主体的にプロジェクトに取り組む姿勢として重要だと考えました。一方で、その有無や尺度を判断することが難しく、主体性や能動性は「まず動く」や「自ら仕事を創る」「イシュー見極め・提案力」で問うこととしました。
- コミュニケーション力
コミュニケーション力も非常に重視したい能力ですが、対話が成り立たずに一方的なプレゼンテーションをする場合にも「コミュニケーション力が高い」と判断してしまうことがありました。またトークが流暢であってもカメラワークや服装等の印象を含めると信頼関係が築けない場合もあり「ラポール作り」に含めることとしました。
- コミットメント
コミットメントもよく会話に挙がる表現ですが、プロジェクト開始時と中盤、終了時で発揮されるべきコミットメントの内容は違います。開始時はまずは与えられた範囲、指示された方法等で結果を残すことが重視される一方で、中盤、終了時ではより本質的な目的や課題に沿ったコミットメントが求められます。
- チームワーク
チームワークは、複数人で一つの目標に向かって協力し、各自の強みを活かして成果を出す能力です。正社員にとっては、組織内での協調性やコラボレーションが強調されます。フリーランス・副業人材はプロジェクトによっては単独で作業することが多く、また異なるクライアントやプロジェクト間で柔軟に動く必要があります。チームワークよりも個々の自律性と自発性がより強く求められるため、この能力を直接的なコンピテンシーとして設定する代わりに、「ラポール作り」として、信頼関係を築くことを重視しました。
最後に
今回定めたコンピテンシーはあくまでも暫定的なもので、これが矛盾のない正解だと主張したいわけではありません。
一方で、「フリーランス力」という能力・行動は非常に重要である一方で多くの人材・企業が言語化できておらず、その解像度を双方が高めることが求められています。フリーランス・副業人材を活用したい企業・担当者の方は、選考やマネジメントで今回ご紹介した5つを元にご自身でもどのような内容が適切かを考えてみてください。
このコンピテンシーを基に、WHOMに登録いただくフリーランスや副業の方と企業の間で最適なマッチングを実現し、双方にとって最大の価値を生み出すことを目指しています。
RPOサービスWHOMでは、今回ご紹介した5つの内容に加えハードスキルや経験を深堀りし、企業とフリーランス・副業人材の双方にとって最大の価値を生み出すマッチングを目指しています。
採用業務にお困りの企業様、案件をお探しのフリーランス・副業の方は是非お問い合わせをしてください。
RPOサービス「WHOM」
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