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2024年1月24日 コラム
この記事の監修者:株式会社WHOM 編集部

労働分配率とは?計算式や目安、ポイントを紹介

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人件費が適切な割合で分配されているかが判断できる労働分配率。

近年は少子化による人材不足の影響で賃上げの機運が高まっています。適切な人件費を支払い効率的に企業を運営するために、労働分配率を把握することはますます重要になってきています。

労働分配率の計算式や数値の目安、適正に保つポイントを解説します。

労働分配率とは

労働分配率とは企業が生み出した付加価値に対して、従業員の給与などがどれくらい支払われているかを表す指標です。つまり付加価値に占める人件費の割合のことで、効率的に運営できているかがわかります。

労働分配率が高い場合は「儲けに対し人件費が多く、経営を圧迫している」可能性があり、低い場合は「儲けに対し人手が足りず、過剰な労働になっている」可能性があります。労働分配率を把握することで適正な人件費を算出できます

労働分配率が高い企業は企業が生み出した利益に対して人件費の割合が高いことを表します。単純に給料が高い会社だけでなく、機械などの設備にお金をかけず人的資源への投資が多い会社も労働分配率が高くなります。

サービス業や飲食業は対面接客が売上につながる業種なので人件費をかける必要があり、自ずと労働分配率が高くなります。一方、設備投資で自動化・省力化などを進めている会社は労働分配率が低くなります。

単に労働分配率の高い低いで良し悪しは判断できず、業種や事業形態で適切な数字は異なります

人件費は従業員のモチベーションに関わります。その反面人件費をかけすぎると経営を圧迫する可能性があるので労働分配率を理解し、適正なバランスを保つことが重要です。

労働分配率と同じように用いられる指標として人件費率があります。人件費率は「売上高に占める人件費」の割合です。

人件費率が売上高を使い、労働分配率が付加価値を使って計算するという違いがあります。売上高はわかりやすい数字なので人件費率の方が簡単に計算できるというメリットがあります。

一方労働分配率は売上高から原価を差し引いた付加価値を使って計算するため、人件費率よりも労働と付加価値の割合を正確に見ることができます。

付加価値とは

付加価値は企業が労働によって加えた価値です。企業は材料を仕入れて加工したり、新しい価値を付け加えたりすることで、仕入れた金額より高い金額で商品を販売します。その際に新しく生み出された価値が付加価値です。

計算方法だと、仕入れた金額と販売した金額の差額が付加価値です。例えば1000円で仕入れた商品を1500円で販売すれば500円が付加価値となります。

付加価値の計算方法は控除法と加算法の2種類があります。

控除法

控除法は販売した価値から原料を仕入れた時点での価値を差し引くことで求めます。売上高と経費がわかれば求められるシンプルな計算方法です。

売上高から控除された費用の内訳情報がわかりづらいという側面があるので、もう一方の加算法を使用する方が一般的です。

付加価値 = 売上高 – 外部購入価値

加算法

企業が生み出した価値である費用や利益など、付加価値を構成する項目を加算して計算する加算法。

商品を加工したりサービスを提供する人材の費用や営業場所にかかる費用など、付加価値はさまざまな工程の積み重ねで作り上げられます。それら工程の費用を加味した上で付加価値を算出するのが加算法です。

減価償却費を付加価値に含めるかどうかは企業次第で、含んだ場合を「粗付加価値」、含めない場合を「純付加価値」と呼びます。

付加価値 = 経常利益 + 人件費 + 賃借料 + 減価償却費 + 金融費用 + 租税公課

人件費とは

人件費とは労働に対して支払われる給与や各種手当てなどのことで、従業員の労働に関わる費用全般を指します。

人件費に含まれるものは主に下記です。

  • 給与手当(基本給以外の残業代、通勤交通費も含まれる)
  • 賞与手当(年間のボーナス)
  • 法定福利費(健康保険、厚生年金等の社会保険料や労働保険料の会社負担部分)
  • 福利厚生費(健康診断費用や社員旅行費用等会社によって様々)
  • 退職年金費用(退職金の支給に備えた毎年の積立金の会社負担部分)

労働分配率計算式

労働分配率(%)=人件費 ÷ 付加価値 × 100

人件費を付加価値で割り、付加価値に対する人件費の割合を出す計算式です。

例えば売上高が年間1億円で付加価値が4,000万円、人件費が2,500万円の企業の場合の計算は次の通りです。

2,500万円 ÷ 4,000万円 × 100 = 62.5%

計算式からわかるように人件費が増えれば労働分配率が上がります。人件費が同じでも売上高の減少などで付加価値が減少しても労働分配率は上がります。逆に人件費が同じでも付加価値が増えれば労働分配率は下がります。

人件費の調整や売上・原価の増減で労働分配率は変化します。

経済産業省が労働分配率計算式のエクセルデータを配布しているのでぜひ利用してみてください。

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kikatu/result-2/h21sokuho/excel/fuhyou7.xls

労働分配率と労働生産性

労働生産性とは、労働者1人が生み出す成果がどれだけ効率的かを数値化した指標。

労働生産性と労働分配率を合わせて分析することで生産性の向上につながるため、関係性が強い指標です。。

計算式は次の通りです。

労働生産性(円)=付加価値 ÷ 従業員数

労働生産性が高いほど従業員一人が生み出す付加価値が高く、投入された労働力が効率的に利用されています。

また労働分配率と労働生産性を使って、一人当たりの人件費を求めることができます。

労働分配率 × 労働生産性 ÷ 100
= (人件費 ÷ 付加価値 × 100) × (付加価値 ÷ 従業員数) ÷ 100
= 人件費 ÷ 従業員数 = 1人あたり人件費

労働分配率や労働生産性を向上できれば一人当たりの人件費が上がり、優秀な人材が集まります。その結果、生産性が上がるという好循環が生まれます。

人件費を考える場合には労働分配率と労働生産性の両方から考えることが重要です。

2021年度の日本の一人当たりの労働生産性は808万円です。

日本の労働生産性の動向2022 | 公益財団法人 日本生産性本部

労働分配率の目安

労働分配率は高いか低いかで良し悪しが決まるわけではないので、目標とする具体的な数値はありません。しかし算出された労働分配率の平均を目安として用いることができます。

労働分配率は企業規模や業種ごとに異なるため、自社の属する部類のデータを目安とすることが重要です。

100%を超えると生み出した付加価値より人件費がかかってしまっており、固定費が増大してしまっている状態です。過大な人件費は継続的な赤字をもたらす可能性が高く、労働分配率が100%を超えると事業存続が危ういレベルと言われています。生産性を向上させるか人件費の削減を迅速に検討する必要があるでしょう。

企業規模別に見る労働分配率の目安

大企業は付加価値を生み出す力が大きいため、労働分配率の平均が50%前後となります。企業の規模が小さくなるにしたがって付加価値を生み出す力が小さくなり、労働分配率が上がっていきます。

  • 小規模企業(資本金1千万未満):78.5%
  • 中規模企業(資本金1千万円以上1億円以下):76.0%
  • 大企業(資本金10億円以上):51.3%

(2020年版 中小企業白書 | 中小企業庁)

業種別に見る労働分配率の目安

全業種平均47.7%(平成29年度)

飲食業やサービス業などの接客業はヒトが付加価値を生み出す業種なので人件費がかかり、労働分配率が高い傾向にあります。

一方金融業やは人件費よりもシステムへの投資が重要なため、労働分配率は低いです。

製造業の場合、自動化・省力化が進んでいると労働分配率は低くなるでしょう。

平成30年企業活動基本調査確報-平成29年度実績- | 経済産業省

労働分配率が高い場合

人件費に割く割合が高い状態です。従業員のモチベーションが高く保たれ、従業員が意欲的に業務に取り組みます。一方利益の確保が難しくなり、企業の負担が大きくなることに注意が必要です。

解決策は人件費を下げるか、さらに付加価値を生み出すことです。

人件費の割合が大きく労働分配率が高い状態が続くと設備に投資できなくなり、生産性の低下を招く可能性があるので、他の費用にもバランスよく資金を配分する必要があります。

人件費を下げる場合にも給与を下げると従業員のモチベーションが低下する可能性があるので、福利厚生費などの下げやすいものから変更していくとよいでしょう。

付加価値を増やして労働分配率を下げるために、無駄な作業を洗い出し業務効率化を進めることも方法の一つです。

労働分配率が低い場合

労働分配率が低い理由は、人件費に十分な配分がされていないか、少ない人件費で効率的に付加価値を生み出しているかの2通りが考えられます。

労働分配率が低いのは利益を確保しやすい状態ですが、従業員のモチベーションは低下する可能性があります。従業員のモチベーションが下がると生産性が落ちるため、結果として付加価値が低下し、さらに労働分配率が下がることも考えられます。労働分配率が下がることで離職が増えたり採用率が落ちるなど、人材確保が難しくなってしまいます。

労働分配率が低いと短期的には利益を確保しやすいですが、長期的には利益を減らすリスクがあります。

改善方法としては給与や賞与のアップ、研修制度や福利厚生施設の充実に充てるお金の増額などが考えられます。付加価値を見ながら人件費を調整できる業務連動型の給与・賞与制度を導入するのも方法の一つです。

労働分配率を適正に保つポイント

労働分配率を適正に保つポイントは次の通りです。

  • 労働の生産性を高める
  • 人件費を適切に管理する

ひとつずつ見ていきましょう。

労働の生産性を高める

労働の生産性を高めると人件費を調整する余裕が生まれるため、労働分配率を適正に保つことができます。

労働の生産性を高めるためには属人的なオペレーションをなくすことが重要です。また原価率を下げると同じ労働でも付加価値は上がります。

原価を落とす余地はないか、属人的なオペレーションはないか、社内調査してみましょう。

人件費を管理する

労働分配率を適正に保つために人件費を管理することが重要です。人件費はある程度固定される費用なのでしっかり管理しなければ企業規模や生産性とバランスが悪くなってしまいます。

人件費を適正に管理するためには給与や賞与の制度内容を明確にする必要があります。また業務連動型の賞与を組み込むことで従業員のモチベーションを保ちながら人件費を調整できます。

または社員比率を見直し、従業員の数に過不足はないか確認することも必要でしょう。

人件費が適正なのか見直すためにも企業の労働分配率を計算することは重要です。

まとめ

自社の労働分配率の適正値がわかれば、「適正な労働分配率の設定→生産性向上による利益確保→労働分配率の低下→利益を人件費へ分配率→適正な労働分配率の実現」サイクルを実現できます。

定期的に労働分配率をチェックすることで、効率的な運営ができるでしょう。