「応募数を増やしたい」「内定辞退率が高い」「担当者によって会社説明のクオリティが違う」
採用担当者にとって応募数や内定辞退率に悩むことは多いでしょう。
採用ピッチ資料を作成すると企業の認知を広げたり、マッチ度の高い応募者を増やすことが期待できます。
採用ピッチ資料の効果、作る時のポイント、作る手順を解説します。
採用ピッチ資料とは
採用ピッチ資料とは採用応募者の自社理解を深め、働くイメージを抱いてもらうために作成する説明資料です。これまでの会社説明資料はさまざまな人をターゲットにして作られた資料でしたが、採用ピッチ資料は応募者のみにターゲットを絞るため採用に関するより詳しい情報を記載できます。採用応募者が企業を詳しく知るための資料だけでなく、まだ応募する前の潜在層に興味を持ってもらうための資料としても利用できます。
「採用ピッチ」という言葉は、採用のための短いプレゼンテーションを意味します。つまり採用ピッチ資料は応募者が働く気になる情報やメッセージをまとめて、ストーリーをもってプレゼンテーションするための資料です。
自社で作成が難しい場合は外注することも可能で、すべて外注すると相場は約40万円です。内訳は企画・構成が5~10万円。テンプレート作成が5~20万円。ページデザインは1ページ1~3万円です。
採用ピッチ資料と会社説明資料の違い
採用ピッチ資料と会社説明資料の違いはターゲットです。会社説明資料は顧客や投資家、株主など、さまざまな方をターゲットに作成するため、企業の概要が伝わるように幅広い情報を網羅的に記載する必要があります。一方採用ピッチ資料は応募者のみに向けらる資料です。応募者が知りたい情報や知っておいてほしい情報に絞って記載できるので企業を深く理解してもらえる資料となります。その代わり応募者以外に対してはほとんど使う機会がありません。
会社説明資料は企業をアピールする資料なので良いところ、魅力的なところだけを伝えることが多いでしょう。それに対し採用ピッチ資料は応募者が自社にマッチするか判断する資料にもなり得るため、企業の悪いところ、課題、事業や一緒に働く人のリアルな部分などを隠さず表現した資料です。
採用ピッチ資料は会社説明資料をより採用に特化させた資料です。
需要高まりの背景
採用ピッチ資料の需要の高まりには、少子化による人材不足、売り手市場、採用難などが関係しています。企業は少ない人材の中から・優秀で自社にマッチする人材を競合他社と取り合っている状態です。さらに最近は転職が当たり前の時代になっているため、採用後でもマッチしない人材はすぐに離職してしまいます。
自社にマッチする人材を効率的に採用するために採用ピッチ資料の需要が高まっています。
また近年は就職活動において求職者と企業がマッチングする手法が増えています。これまでは求人サイトに求人情報を掲載し、応募を待って採用することがほとんどでしたが、今はSNSやリファラル、ダイレクトリクルーティングといった新しい方法が増えています。企業側からアピールし、どんな採用方法を使ってもクオリティに差がなく自社の魅力を紹介できる資料が必要な時代になっています。
最近では採用ピッチ動画を使い自社の魅力を紹介する企業も増えています。
採用ピッチ資料の効果
採用ピッチ資料の効果は次の通りです。
- 認知の拡大
- マッチ度の向上
- 面談
- 面接の効率化
- 面接官や採用方法によるクオリティの差を抑える
ひとつずつ見ていきましょう。
認知の拡大
採用ピッチ資料はこれまで企業を知らなかった人にも認知してもらう効果があります。SNSで紹介した採用ピッチ資料が拡散されれば、フォローしていなかった層まで認知を広げられます。自社のことを知らなかった層や転職潜在層に認知を広げ、母集団形成できれば応募者が増えていくでしょう。
株式会社SmartHRは応募数が5.3倍に増えたという例があります。
マッチ度の向上
入社後のミスマッチを防ぎ、内定辞退や早期離職防止につながります。
採用ピッチ資料で採用条件や社内の雰囲気が伝わるように記載することで、自社にマッチした人材のみに応募者をスクリーニングすることができます。もともと自社とマッチしない人材からのエントリーが少なくなるので、面接・選考に使用する人材や時間といった採用コストを削減できます。
HeaRさんでは2-3割の人が選考辞退になる時期があったという例があります。
面談・面接の効率化
採用ピッチ資料があれば面接時の会社説明の時間を省略できます。一般的に面接では20分ほど会社説明の時間がありますが、面談・面接前に採用ピッチ資料を応募者に送付することで、会社説明の時間約20分を削減できます。面接を行うたびに必要なコストをカットすることができます。
求職者としても事前に質問を準備する時間があるため踏み込んだ質問をしやすくなるというメリットがあります。
面接官や採用方法によるクオリティの差を抑える
採用ピッチ資料は一度作り込めばその後は資料を送付したり説明するだけなので、面接官や採用方法による会社説明のクオリティの差を抑えることができます。
従来の方法だと面接官の担当歴の違いやリファラル採用、SNS採用といった採用方法の違い、またWeb面接、集団面接などといった面接方法の違いによって会社説明のクオリティに差が出てしまいます。
自社の採用に関する情報を網羅した採用ピッチ資料を応募者に送付したり資料に沿って面接を行えば会社説明のクオリティに差が出にくくなりますし、質問等の返答にも差が出にくくなります。
採用ピッチ資料を作る時のポイント
採用ピッチ資料は作成に時間や費用がかかります。以下の点に注意することで効率よく作成できます。
- 見やすくなるようデザインを工夫する
- ストーリー性を持たせる
- 応募者が求めることを入れる
見やすくなるようデザインを工夫する
文字だけの資料にならないようデザインを工夫すると見やすい資料になります。グラフや図解などを入れて文字数を減らし視覚的な変化を与えることが見やすくなるポイントです。
また文字では伝わりにくい社内風土や文化、雰囲気は、社内で撮影した写真などを使用すると伝わりやすいでしょう。写真やイラストといったビジュアルはその会社らしさが伝わりやすく、他社との差別化を図れます。その会社らしさを表現することで、印象に残る資料になるでしょう。
ストーリー性を持たせる
単純に採用に関する情報を記載するのではなく、資料全体にストーリー性を持たせましょう。読者が徐々に興味を持ち、最終的にはエントリーする方向に行くようにストーリー性を持たせることができれば応募者の増加につながります。
資料にストーリー性を持たせるためには「伝えること」を意識し、構成、メッセージ、タイトルの内容と順番を決める必要があります。
ストーリー性を持たせ、最後に求職者に次に起こしてほしいアクションを記載するとエントリーにつながりやすい資料になります。
応募者が求めることを入れる
「自分が成長できる環境か」「社内の人間関係」「福利厚生の充実」など応募者が求める情報を入れましょう。
企業の良い点や魅力だけではなく、悪い面や自社の課題も知りたいと求職者は考えています。応募者が求めている内容であれば課題であっても記載することで、入社後のミスマッチを防ぎます。
また求職者が質問しづらい休暇や給与、評価制度なども記載すると、ニーズに応えた資料になるでしょう。
採用ピッチ資料の項目
項目は大きく次の3つに分けられます。
- 事業紹介
- 組織紹介
- 採用情報
ひとつずつ見ていきましょう。
事業紹介
「なんの事業をやっている企業なのか」「これまでどういった活動をしてきたのか」「今後はどのようなビジョンがあるのか」
企業としての現在、過去、未来を紹介し、行ってる事業の魅力が伝わるよう作成します。
- 事業内容
- 沿革
- MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)
- 今後の展開
組織紹介
応募者が実際に働く際に関連する内容です。「どんな人が、どんな働き方をしてるのか」が伝わるように記載しましょう。応募者が求める情報を写真やイラストを入れながら記載するとイメージしやすいです。
- メンバー紹介(年齢層、男女割合、経営者紹介)
- 社風/文化(社内イベント)
- 部署、組織図・働き方や福利厚生(勤務形態、新卒中途入社者割合リモートワーク率、退職率)
- 評価制度や賞与(給与テーブル、昇給実績)
採用情報
最終的にエントリーするための必須情報です。抜け漏れや間違いがないように注意しましょう。
- 募集ポジション
- 業務内容
- 求める人物像
- 選考フロー
- 自社の課題やメッセージ
作成の手順
おすすめの作成手順は次の通りです。
- プロジェクトメンバーを選定する
- 採用ターゲットを明確化する
- 目的と訴求ポイントを明確化する
- ポイントに沿って作成する
- 検証を行いアップデートする
①プロジェクトメンバーを選定する
情報の偏りがないよう、さまざまな部署や役職からメンバーを選定しましょう。企業規模にもよりますが、5~10人を目安にメンバーを選定するとよいです。
②採用ターゲットを明確化する
ターゲットはあいまいに決めるのではなく、明確に決めることで資料の方向性もはっきりします。
例えば「コミュニケーション能力がある人」ではなく「アイディアや改善点を自発的に意見できる人」といったように具体的にターゲットを決定しましょう。ターゲットが漠然としていれば求めていない人からもエントリーされ、採用コストがかかってしまいます。
③目的と訴求ポイントを明確化する
目的とは「何を解決するための採用ピッチ資料なのか」を指します。訴求ポイントは「自社の魅力と課題」です。目的と訴求ポイントを明確化することで、伝えたいことがはっきりした資料になります。
④ポイントに沿って作成する
これまでに明確化してきた採用ターゲット、目的、訴求ポイントに重点を起きながら作成します。作成する際にデザイン性とストーリー性を持たせることでオリジナリティが生まれます。
⑤最新情報に更新する
定期的に最新情報に更新することが重要です。情報が古いままだと応募者が不安に思ってしまい辞退につながります。
社員数や男女比、沿革など変化がある情報は定期的な更新が必要です。
採用ピッチ資料の効率的な運用方法
さまざまな方法で運用できます。
- WebやSNSで公開する
- 面接前のメールに添付する
- 会社説明会で使用する
- 採用スカウトで使用する
ひとつずつ見ていきましょう。
WebやSNSで公開する
WebやSNSで公開することで認知度が向上します。
自社に興味がある人はWebを閲覧するので、Webへの掲載は必須です。
またSNSで拡散されれば、自社を知らなかった層への認知を広め、潜在層にアプローチできます。
面接前のメールに添付する
面接前のメールに添付することでスクリーニング効果があります。「実際にエントリーしたものの採用ピッチ資料を読んでみるとイメージと違った」という場合はミスマッチを防ぎ採用コストを削減できます。
入社に熱意のある人材は面接前のメールに添付することで、採用ピッチ資料を読み込んでくれるのでより良い面接を行うことができます。
会社説明会で使用する
採用ピッチ資料を使って会社説明会を行えば、担当者が変わっても同じ質の会社説明ができます。
説明会で担当者を選ばないため
採用スカウトで使用する
スカウトメールやリファラル採用で対象者に送付することで、より詳しい情報を届けられます。
従来の方法であればメールでスカウトを送るため文章で対象者を惹きつける必要がありました。採用ピッチ資料を送付することで、写真やイラストを使い自社の特徴をイメージしてもらいやすくなります。
また人材紹介会社のエージェントに送るのも効率的な方法です。
採用ピッチ資料の事例
採用ピッチ資料の事例として次の3社を紹介します。
- SmartHR
- ミラティブ
- サイボウズ
株式会社SmartHR
クラウド人事労務ソフト「SmartHR」を展開する会社です。
先ほど説明したように採用ピッチ資料を公開した結果、応募数が5.3倍に増加し閲覧数が40万回超えという効果がありました。
また同社社長のブログにてその他の効果について、詳しく紹介されています。
株式会社ミラティブ
「採用候補者さまへの手紙」という興味を惹かれるネーミングが特徴の採用ピッチ資料。ゲームの実況配信サービスを提供している企業であり、その特性を活かしてイラストを多く使用し、企業で働くイメージが湧きやすい資料です。
サイボウズ株式会社
クラウドサービスの「kintone」をはじめさまざまなサービスを提供している企業です。採用ピッチ資料はイラストや写真を使っておらずシンプルですが、採用対象のエンジニアに向けて細かく運用体制を紹介しています。「ユニークなところ」というページで訴求ポイントが記載されており、他社との違いがわかりやすくまとめられています。
まとめ
採用ピッチ資料を作成することで認知を広げ応募者を増やしたり、採用コストを削減できるといったメリットがあります。
「こんな人は弊社に合わないかも」と懸念点も採用ピッチ資料で記載している企業は、応募者にとって良い印象を抱くという声もあります。
応募数が少なかったり、離職率が高いといった悩みがある企業は、ぜひ採用ピッチ資料を作成してみてください。