バックグラウンドチェックとは、採用候補者の身元調査です。採用活動をする際、履歴書・職務経歴書に虚偽や経歴詐称がおこなわれている場合も少なくありません。
履歴書や職務経歴書だけでわからない部分は、バックグラウンドチェックによって補える可能性があります
しかし「どのように進めればいいかわからない」「何をチェックすればいいかわからない」と悩んでいる人事の方も多いでしょう。
そこで本記事では、バックグラウンドチェックの目的や効果、調査方法などについて詳しく解説します。
バックグラウンドチェックに取り組みたい企業は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
バックグラウンドチェックとは?
バックグラウンドチェックは、採用候補者の履歴に虚偽や詐称がないかを確認するための身元調査です。主に学歴・職歴・反社会的行為・犯罪歴・SNSなどが調査の対象となります。
採用候補者が経歴に嘘をついていないかを確認すると、採用時のミスマッチを防いだり、事前に潜在的なリスクを回避したりできる可能性が高まります。
外資系や金融系の企業では今までも実施されてきましたが、一般企業では馴染みのないものでした。しかし、最近では企業の終身雇用の慣行が減少し、それに伴い働き手の転職が増加しています。
この変化が背景となり、多くの企業がバックグラウンドチェックを採用するようになりました。
リファレンスチェックとの違い
バックグラウンドチェックと似た言葉に「リファレンスチェック」があります。
リファレンスチェックは、採用前の候補者に対する調査手法ですが、バックグラウンドチェックとは調査内容が異なります。
リファレンスチェックは主に前職の上司・同僚・部下・取引先など、候補者をよく知る人に対して質問をおこない、仕事の実績・性格・経歴などを確認する手法です。
一方で、バックグラウンドチェックは候補者の経歴に虚偽や詐称がないかを調査するため、ネガティブな要素を確認する意味合いが強くなります。
ただし、この2つの手法が明確に区別されているわけではありません。
たとえば、バックグラウンドチェックで前職の状況をリファレンスチェックしたり、逆にリファレンスチェックで経歴の確認がバックグラウンドチェックの一環としておこなわれたりします。
バックグラウンドチェックの目的
バックグラウンドチェックの主な目的は、採用候補者の経歴に虚偽がないかを確認し、企業の採用リスクを最小限に抑えることです。
もし採用後に不適切な人物であることが判明した場合でも、契約を取り消すことが難しい場合もあります。採用担当者は、候補者を履歴書・職務経歴書・面接で判断しなくてはいけません。
しかし、候補者が提供した職務経歴はその本人の自己申告に過ぎません。そのため、経歴の真偽を確認するためには、第三者からの情報が不可欠です。
また、過去に犯罪行為や深刻なトラブルの発生有無、反社会的勢力との関わりなどを採用前に確認すると、採用後に組織内の混乱・業務上の損害を未然に防ぐ手段になります。
アメリカなどでは「ネグリジェント・ハイヤリング(怠慢雇用)」と呼ばれ、採用前の適切な調査がおこなわれなかった場合、損害や事故の発生に対して企業も責任を負う可能性があります。
日本でも、同様の観点からバックグラウンドチェックを実施している企業があります。
バックグラウンドチェックから得られる効果
バックグランドチェックから得られる効果は、以下のとおりです。
- コンプライアンスの強化
- 採用の強化
近年、企業のブランド力やイメージが重要視されており、一部の社員が引き起こす問題行動が、企業に及ぼすダメージは以前より増大しています。特にSNSの普及により、問題が広まる速度が速くなっています。
さらに、政府が反社会的勢力との結びつきを厳しく取り締まる法律や指針を制定しており「反社チェック」の重要性も高まっています。
バックグラウンドチェックは問題のある社員の採用を未然に防ぐため、企業のコンプライアンスの強化に繋がるでしょう。
また、急速なDXの進展が企業に影響を与え、ITエンジニアなどデジタル分野の人材採用が急がれています。
一方で、即戦力となるデジタル人材の争奪戦が激しく、結果的に慢性的な人手不足に陥っています。
同時に、日本においては転職が一般的になりつつあり、新卒採用だけでなく、継続的に優秀な人材採用が重要視されているため「見極めの精度向上」と「採用の効率化」が求められています。
この状況が、バックグラウンドチェックへの需要を高めている要因と考えられるでしょう。
バックグラウンドチェックをおこなう方法
バックグラウンドチェックをおこなう方法は、以下のとおりです。
- 調査会社を活用する
- 自社だけで実施する
バックグラウンドチェックは、調査会社を活用する方法と自社だけで実施する方法があります。どちらにもメリット・デメリットがあるので、どちらで調査するかをよく検討しましょう。
調査会社を活用する
バックグラウンドチェックは、専門の調査会社に依頼して実施するのが一般的です。調査を依頼するときは、調査項目を調査会社と打ち合わせをして決定します。
調査会社に依頼するメリットは、企業が難しいとされる専門的な調査を実施できる点です。
金銭トラブルや反社会的勢力のチェック、採用候補者の素行などは専門的な調査が必要であり、企業が自ら実施するのは困難です。
一方で企業が委託管理責任を負うことにより、調査会社が不正な調査をおこなった場合に法的な責任を問われる場合があります。
特に、差別につながるような要配慮個人情報の取得には慎重さが求められ、同意を得てもプライバシーの侵害になる可能性もあるでしょう。
調査会社のコンプライアンスの徹底が不十分な場合、違法な調査が行われるリスクも存在するため、注意が必要です。
自社だけで実施する
バックグラウンドチェックを自社だけで実施する方法もあります。企業が自ら調査できる項目は、学歴・職歴といった比較的簡易に確認できるものに限られるでしょう。
具体的には、学歴についての卒業証明書の入手が可能です。職歴については、採用候補者の同意を得たうえで、現職の企業から雇用形態・職歴・在籍期間などの情報が載った職務経歴書を入手できます。
調査の項目が限定されるため、調査会社に依頼する費用を節約できるメリットがありますが、採用候補者への同意手続きや各種書類の手配など事務負担が増えるデメリットがあります。
バックグラウンドチェックで実施する調査内容
バックグラウンドチェックで実施する内容は、以下のとおりです。
- 経歴
- 登記情報
- 前職状況
- 犯罪・軽犯罪歴
- 近隣調査
- 反社チェック
- SNSでのプライベート
- 民事訴訟・破産履歴
バックグラウンドチェックでは、犯罪歴や反社チェックなど、採用候補者にマイナスなイメージがないか確認します。
企業が安心して採用候補者を迎えられるように、ぜひ参考にしてみてください。
経歴
学歴や資格の保有などの経歴に虚偽や詐称がないかチェックします。卒業証明者や資格の証明書を提出してもらい、履歴書や職務経歴書と相違がないか確認しましょう。
また、SNSの投稿や前職の企業の聞き込みをもとに確認する場合もあります。
登記情報
採用候補者の登記情報について確認しましょう。法務局で公開されている登記簿を利用して、不動産の所有状況を調査できます。
よって、採用候補者が所有する不動産が差し押さえられているかどうかを確認できます。
前職状況
前職での普段の勤務態度や勤怠について、前職の上司・同僚に電話・オンラインアンケートを実施します。また、雇用形態や在籍期間、職務内容などの職歴も間違いがないか確認します。
犯罪・軽犯罪歴
採用候補者に犯罪・軽犯罪歴がないかを確認します。日本では犯罪歴は非公開になっているため、インターネットやSNS、新聞などのメディア情報で調査します。
犯罪歴はネガティブ情報なため、プライバシー保護の観点から業務に直結する範囲でのみ確認しましょう。
もし、採用後になってから問題となりそうな犯罪歴が判明した場合、大きなリスクとなり得るため注意が必要です。
近隣調査
採用候補者の自宅周辺で、近隣住民に聞き込み調査をおこないます。居住の実態・普段の生活状況・本人の評判など、採用候補者のプライベートな一面を知ることで、本人の性格や生活習慣を把握できます。
反社チェック
採用候補者が、反社会的勢力と関係を持っていないかをチェックします。主にメディアの情報や反社チェックサービスの独自データベースなどで調べます。
反社会的勢力の関係者でないか確認できれば、採用したときのリスク回避につながるでしょう。
SNSでのプライベート
インターネット上での調査も一般的な手段となっています。主にWebのニュース記事・ブログ・SNS上での不適切な投稿などを確認します。
SNS上での公序良俗に反する投稿が頻繁に見られたり、社会的なリテラシーが低いと感じたりする場合、社外秘情報を公開する可能性などと結びつく可能性があります。
民事訴訟・破産履歴
主に財産に関する紛争があったかどうかをチェックします。たとえば「損害賠償を請求された」などがあたります。
ただし、民事訴訟歴は公的な機関でデータベース化されていないため、調査会社が保有する独自のデータベースを確認することが一般的です。
また破産歴の調査は、職業制限がある仕事に関わってくるため重要な項目です。たとえば税理士・弁護士・信用金庫の役員・生命保険募集人など、他人の資産や金銭を扱う仕事には制限がかかりやすいでしょう。
自社の事業内容に応じて、制約を確認することが必要です。
バックグラウンドチェックまとめ
バックグラウンドチェックとは、採用候補者の履歴書や職務経歴書に虚偽や詐称がないか確認する身元調査です。
採用する前に経歴に間違いがないか、問題を起こす人物かどうか確認すると、企業のコンプライアンス強化や優秀な人材の見極めにつながるでしょう。
バックグラウンドチェックは、専門の調査会社に依頼すると採用候補者の経歴を細かくチェックしてくれます。
- 経歴
- 登記情報
- 前職状況
- 犯罪・軽犯罪歴
- 近隣調査
- 反社チェック
- SNSでのプライベート
- 民事訴訟・破産履歴
ただし、バックグラウンドチェックは採用候補者の個人情報を取得するので、無断でおこなうと個人情報保護法に触れてしまう可能性があります。
また、業務に無関係の情報を取得すれば、プライバシーの侵害にもなりかねません。
事前に採用候補者の同意を得て、バックグラウンドチェックについての目的や調査方法の詳細を説明すると良いでしょう。
確実に採用活動を成功させ、企業のリスクを減らしたい方はぜひ参考にしてみてください。