「ベンチャー企業は採用がむずかしい」「優秀な人材が大手企業に取られてしまう」と悩んでいるベンチャー企業の採用担当の方は多いのではないでしょうか?
ベンチャー企業の採用が難しいと言われる原因として、知名度が低かったり、採用にコストをかけられないことが挙げられます。しかしベンチャー企業を希望している求職者は新卒、中途ともに増加傾向にあります。今回は、ベンチャー企業が優秀な人材を獲得するためのポイントや採用方法について解説していきます。
目次
ベンチャー企業の採用は難易度が高い
ベンチャー企業は大手企業と比較して、採用の難易度が高いと言われています。ベンチャー企業は少ない人材で高い利益を生み出していく必要があるので、採用ではなるべく優秀な人材を獲得したいところです。
そもそも昨今は、少子高齢化と、若い人口が東京に一極集中していることが原因で、ベンチャー企業だけでなくほとんどの企業で採用が難化しています。ただでさえ少ない人材を取り合う中で、優秀な人材が条件のいい大手企業に採用されてしまうという状況です。
ベンチャー企業に明確な定義はありませんが、「今までにないタイプの事業を展開し、短期間で急成長している企業」がベンチャー企業と呼ばれています。
似たような企業にスタートアップ企業もありますが、同様に採用の難易度が高いと考えられています。スタートアップ企業とベンチャー企業は多少の定義の違いはありますが、採用の難易度が高いと言われる原因は同じです。
私もベンチャー企業で採用担当をしていたころ、応募が集まらずさまざまな求人方法を試して失敗しました。しかし採用が難しい理由を調べ、採用方法を改善し応募を増やすことができました。
これから、ベンチャー企業の採用が難しいと言われている原因について、詳しく解説していきます。
ベンチャー企業の採用が難しい理由
ベンチャー企業の採用が難しいと言われる理由は次の4つです。
・悪いイメージがある・知名度が低い・採用にかけられる費用が少ない・求人を見つけてもらいにくい |
ひとつずつ見ていきます。
悪いイメージがある
ベンチャー企業の採用が難しい理由として、求職者がベンチャー企業に対して次のようなイメージを持っていることが考えられます。
・経営が安定していない・勤務時間が長く、休みが少ない・研修や評価などの人事制度が整っていない |
安定志向のある求職者にとっては経営が安定していない点は不安要素になってしまいます。またベンチャー企業では、社内の規定が明確に決まっていないことが多いです。
経営の安定や社内規定に関しては、大手企業と比べて見劣りしてしまうことは仕方ないと思います。
残業時間や有給取得率のデータ、人事制度に関する情報を公開したり、面接で回答できるように、事前に準備するとよいでしょう。
知名度が低い
ベンチャー企業は大手企業と比較して、知名度が低いです。
ベンチャー企業の採用において、事業内容でどれだけ求職者を惹きつけられるかがポイントですが、知名度が低いとそもそも*母集団を形成することができません。
知名度が低いベンチャー企業は直接求職者に働きかける採用方法を選択することが重要です。後ほど詳しく解説いたします。
*母集団形成・・・自社の求人に興味関心を示す求職者の集団 |
採用にかけられる費用が少ない
採用にかけられる費用が少ないと、求職者と出会う機会が少なくなってしまいます。採用にかかる費用は外部コストと内部コストに分けられます。
外部コスト
・求人サイトやダイレクトスカウト、エージェントなど、求人媒体への支払い・会社説明会などの会場費 |
内部コスト
・採用専門の社員の人件費・面接者への交通費・内定者への交際費 |
外部コストが少ないと企業の宣伝が少なくなり、内部コストが少ないと会社内部で採用を担当する労働力が足りなくなってしまいます。
採用費用に上限を設けている企業が多いので、無料の採用方法を上手く使いながら適切なポイントに費用をかける効率化が必要です。後ほど解説します。
求人を見つけてもらいにくい
ベンチャー企業では、求人サイトに掲載しても自社の求人が他の企業の求人に埋もれてしまい、見つけてもらいにくいということがあります。大手企業は知名度が高いうえにコストもかけることができるので、求人サイトでは上位表示されます。
自社にあった採用方法やベンチャー企業に特化した求人サイトへの掲載が有効です。こちらも後ほど解説いたします。
ベンチャー企業に入社希望の求職者の数
ベンチャー企業の採用が難しい理由を説明いたしましたが、実際にベンチャー企業に入社を希望している求職者の数は大手企業を希望している人と比べると、ほとんど変わりありません。
大手企業を希望する求職者が多いという常識は、近年変わりつつあります。新卒採用と中途採用に分けて詳しく解説していきます。
新卒採用
マイナビ実施の大学生に対するアンケートによると、「絶対に大手企業がよい+自分のやりたい仕事ができるのであれば大手企業がよい」という割合は51.1%であるのに対し、「やりがいのある仕事であれば中堅・中小企業でもよい+中堅・中小企業がよい」という割合は44.9%で、ほぼ半々の数字となっています。
また、2021年度に卒業予定の学生に対する以下の調査では、「主にベンチャー企業志望」の学生の方が、「大手企業のみ志望」している学生よりも多いということがわかります。
出典:21卒学生、「主にベンチャー企業志望」が35.9%ー”完全大手志向”の学生は1割 | CANVAS
中途採用
35歳以上のユーザーを対象に行われた調査では、76%以上の人が「スタートアップ企業へ転職したい」と答えており、新卒よりもさらに関心が高いことがわかります。
出典:ミドル1000人に聞く!「スタートアップへの転職」実態調査 | エン・ジャパン
大手企業からスタートアップ企業への転職比率は年々増加しています。
2021年4~9月は3年前の同時期と比べて、大手からスタートアップへの転職比率が7.1倍に増加しました。
参考:大企業から新興へ転職者7倍 縮む年収差が追い風 | 日本経済新聞
以上のことから、ベンチャーを希望している求職者の数は少なくなく、むしろ増加傾向にあるということがわかります。
優秀な人材を獲得するためのポイント
大手企業に負けずにベンチャー企業が優秀な人材を獲得するためには、会社の熱意やビジョンに共感してもらうことが大切です。
会社の熱意やビジョンを伝えるために、次の事前準備を行いましょう。
・自社の訴求ポイントを整理する・採用基準を明確にする・求める人材を明確化する・妥協しない |
ひとつずつ解説していきます。
自社の訴求ポイントを整理する
最も重要なことは、自社の訴求ポイントを整理することです。訴求ポイントとは、アピールポイントのようなものです。
事業内容や制度、経営理念など、大手企業にはない自社の魅力が求職者へ刺さるように、整理しましょう。
私が採用担当の際は自社の訴求ポイントを洗い出すミーティングを行い、「若くても裁量権がある」という結論にたどり着きました。企業説明や会社案内は若い社員が担当し、大手企業との差別化を図りました。
採用基準を明確にする
採用基準を明確にすることで、採用担当が変わっても公平性を保つことができ、自社が求める人材を的確に判断することができます。
採用基準とは、求職者を評価する際の指標のことです。ベンチャー企業においてよく設定される採用基準は次の3点です。
・価値観 / 人間性・スキル / 経験・自社で好成績を挙げている社員との類似性 |
「自社で好成績を挙げている社員との類似性」とは、すでに好成績を挙げている社員の行動特性や価値観を分析し、採用基準にするものです。
採用基準が明確であれば、入社後のミスマッチを防ぐことができます。
求める人材を明確化する
企業や部署、職種によって求める人材は異なります。現在の問題点を抽出し、解決するために必要な人材を明確化しましょう。
ベンチャー企業では次のような人材が必要とされています。
・成長志向が強いこと・ビジョンや経営理念に共感できること・実行力があること・主体性があること・柔軟性があること |
上記を参考に、自社に必要な人材を明確にしましょう。
妥協しない
採用活動で重要なポイントは妥協しないということです。ベンチャー企業の採用はコストが限られているため、なるべく早く採用を確定させたいものです。
しかし妥協して採用してしまうとミスマッチが起きてしまい、内定辞退や早期退職につながってしまい、余計にコストがかさんでしまいます。
「採用基準」や「求める人材」をしっかり設定すると、妥協せずに採用を行いやすいです。
大手ではできない、ベンチャーならではの具体的な採用戦略
自社ホームページやSNSを通じたブランディング
大手企業ほど知名度がなく、採用媒体にあまりコストをかけられないベンチャー企業は、自社ホームページやSNSを通じたブランディングが有効です。
自社ホームページやSNSは無料で運営できるので、求人媒体だけで採用活動するよりも効率的に母集団形成することができます。
自由に設定や投稿できる自社ホームページやSNSは企業ごとの特色が出やすく、企業理念や社内の雰囲気にあった人材が集まる可能性が高まります。
スピードを早めて選考を進めていく
ベンチャー企業は大手企業よりも、なるべく早く選考を進めていきましょう。優秀な人材は多くの企業からアプローチを受けており、同時に複数の選考を進めていることが多いです。
求職者も転職では不安を抱いているため、選考や連絡のスピードが早ければ、他の選考を中断して入社を決めてくれる可能性があります。
転職潜在層にアプローチする
応募を待つだけでなく、転職潜在層にアプローチしましょう。転職活動を積極的に行っているわけではなく、「いい企業があれば転職したい」という転職潜在層は全体の7割いると言われています。
ダイレクトリクルーティングやリファラル採用、SNSなどが転職潜在層へアプローチには効果的です。具体的な採用方法については後ほど記載します。
参考:「求職者・候補者の転職意識の実態」を調査、転職潜在層を含めた「転職予備軍」は約70%と判明 | HRzine
企業側からアプローチする採用方法を選ぶ
現在はたくさんの採用方法がありますが、企業側からアプローチする方法を選ぶことが重要です。
認知度では大手に劣ってしまうため、求人サイトに掲載するだけの「待ち」の状態だと、他の企業の広告に埋もれてしまいます。ダイレクトリクルーティングやリファラル採用だと直接アプローチできるため、求職者の目に留まりやすく求人情報が流れてしまうという可能性を抑えることができます。
面接、内定後のフォロー
面接や内定を通知した後に行うフォローは内定辞退率に直結します。採用から入社までの間も定期的に連絡をとることで、選考時のモチベーションを保ちながら入社までの期間を過ごすことができます。
私が採用担当だった際は、簡易的な課題を出したり雑談形式のオンラインミーティングを開催することで、内定者のフォローを行っていました。
ベンチャー企業の採用方法
ベンチャー企業におすすめの採用方法を6つ紹介します。
・求人サイト・ダイレクトリクルーティング・ソーシャルリクルーティング(オウンドメディアリクルーティング)・リファラル採用・エージェント・採用イベント |
求人サイト
求人サイトとは、お金を支払い広告を掲載する求人媒体のことです。求職者が求人を探す際に最も使用されています。「リクナビ」「マイナビ」「doda」などが有名な求人サイトの例です。
ベンチャー企業は求人サイトだけでなく、他の方法と併用することをおすすめします。また、ベンチャー企業に特化した求人サイトもあります。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングとは、企業が求職者へ直接アプローチする方法です。求人サイトと異なり、気になった求人へ直接アプローチすることができます。
ピンポイントで求める人材へアプローチできるので求人情報が埋もれる可能性が低いです。あまりコストをかけることができないベンチャー企業に適した採用方法だと思います。
ソーシャルリクルーティング(オウンドメディアリクルーティング)
ソーシャルリクルーティングとは、SNSを活用した採用方法です。
X(Twitter)やFacebookで採用情報を公開したり、気になる求職者へダイレクトメッセージを送ったりすることができます。SNSを通じて直接求職者へアプローチできるので、ダイレクトリクルーティングの一つに分類されます。
無料で採用活動ができることが大きなメリットです。
私が採用担当の際は、ソーシャルリクルーティングに最も力を入れていました。写真や動画のアップロードもしやすいので自社の雰囲気を最も伝えやすい方法で、おすすめです。
リファラル採用
リファラル採用とは、社員の知り合いを紹介してもらう方法です。求人媒体を通さないのでコストをかけずに採用活動を行うことができます。
また、ある程度の人となりを把握して選考に進むことができますし、知り合いが在籍しているので採用後もスムーズに会社に馴染むことができるでしょう。
エージェント
エージェントは、企業が採用する人材に求める経験やスキル、人物像などを登録し、求職者の中から条件に一致する人をマッチングしてくれるサービスです。
料金は成功報酬型なので、採用が成立してはじめてエージェントへ支払いが発生します。条件にあった人材のみ紹介してくれるので、ミスマッチが少ない採用方法です。
採用イベント
複数の企業が行う合同企業説明会や個別で行う説明会、オリエンテーションなどが採用イベントです。
ベンチャー企業だと、経営者と直接話しができる座談会やワークショップを行う企業も増えてきています。
新卒の場合、採用イベントとしてインターンシップもよく取り入れられています。
私が採用担当をしていたベンチャー企業はほとんどの新卒社員をインターンシップから採用していました。ベンチャー企業のインターンシップに参加する学生は、熱量が高く、自分のビジョンをしっかり持っている方が多いという印象です。そのため入社してからも主体性を持って仕事をしてくれていたと思います。
まとめ
コストや知名度により、大手企業に比べて露出が少なくなってしまうことは仕方がありません。
しかしベンチャー企業に入社したいという求職者の割合は増えてきているため、自社特有の雰囲気を伝えることができれば必ずマッチする人材と出会えます。
まずは①SNSを使って社内の雰囲気を発信する、そして②採用活動においてはスピードを早める。ベンチャー企業が採用で勝つためにはこの2点が最も重要だと思います。
ベンチャー企業だからといって、必ずユニークな採用をする必要はありませんので自社に合った採用方法を探していきましょう。